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あるイスパニア人の老航海士の日記より

15xx年5月5日 晴れ


この日、顔馴染みの商人ホセの手引きにより、
ジェノヴァ行きの商船に乗船する。
正午過ぎにセビリアを出港。
さらば我が故郷よ。
その地を踏むことはもうないであろう。
船上より、その母なる街の姿を目に焼き付けておく。


船員達が忙しく甲板を駆ける姿を見て、
ふと、船乗りとしての血が湧き上がるのを感じる。
なにか手伝えることはないかと申し出たいところではあったが、
残念ながら私の体はもはや重労働には耐えられない。
人はやがて老いるものだが、
今はそれが寂しく感じられる。


多少の船の揺れは、
それでも私には心地いいものだ。
しかし、ハンナは早々に酔いを訴え、
用意された船室に戻って、船医の世話になっている。


思えばハンナには苦労をさせてばっかりだった。
噂で聞いたが、ハンナは私が海に出ている間、
教会での神への祈りを欠かした日がなかったと言う。
私の、無事の帰還を願って。
不器用な私は、ハンナになにもしてやれなかった。
結局、子供にも恵まれなかった。
それでもハンナは、私についてきてくれた。


私が陸に上がる身となり、まず考えたことは、
ハンナのかつてからの願いをかなえることだ。
ハンナの祖母の故郷であるヴェネツィアで、
私と二人、静かに余生を過ごすこと。
聞けばヴェネツィアも、
セビリアに負けず劣らず美しい水の都ということらしい。


私は、偉大なる神に誓う。
私に残された短いこの命を、すべて、
この愛しき妻の為に捧げることを。


ハンナ、愛している。





15xx年5月8日 大時化


朝から雲行きがあやしかった。
風の流れも、なにか今までと違和感を感じた。
私はこの船に無理を言って乗せてもらっている立場でありながら、
ただちにこの近くの港に緊急寄港することを船長に提言した。
根拠は、ない。
船乗りの「勘」というやつだ。
なぁに、こんな天気は日常茶飯事さ。
船長が陽気に笑い、このままの進路を保つよう船員に指示を出す。
若いことはいいことだが、
この船長は、もう少し周りの意見に耳を傾けるべきだろう。


海は、女より気まぐれなのだ。


東からの突然の雷鳴が合図だった。
波が、次第に獣の牙と化して船体に突き刺さる。
船が、その度に悲鳴を上げる。
きしむマスト。
3人がかりでも言うことを聞かない舵。
海の怒りがその頂点に達した時、
私たちが乗る巨体が、宙を舞った。




(中略)





※編者注:編集の都合上しばらく割愛させていただくが、
このあと嵐の厳しさを物語る描写と、若い船長の行動に対する愚痴が延々と続く。









15xx年5月10日 快晴


ああ、神よ。
あなたに感謝しなければならない。
この日に、すばらしき奇跡を二つも起こしてくれたのだから。


まず、私達はあの嵐から無事生還を果たした。
雲一つない空が、それを物語っていた。
船員達からは、私の的確な助言があったからだ、と称賛の声をいただいた。
それは正直に受け止めておこう。
若い彼らのこれからの指標になってもらえれば、
それに勝るものはない。
だが、海というところはいくら万事を尽くそうとも、
必ずいい結果が返ってくるところではない。
常に生と死の境を彷徨うことが、航海だということを知ってもらいたい。


ともかく、船体の損傷もひどく私達の疲労も限界をはるかに通り越していた。
ハンナも一睡もできていない。
このような事態になったことを船長とともに詫びるが、
これがあなたのいた世界なのですね、と笑顔さえ見せてくれた。
強い女だ、と思った。
ともかく、このままジェノヴァに向かうのは困難と断定し、
パルマへの緊急寄港が決定された。
多数の海賊の拠点となっている海域だが、いたしかたない。
海図を再度確認し、進路は南に向いた。


日も傾きだした頃だった。


突然、見張りに立っていた船員の叫び声が届いた。
多数の木片が、海上に散乱しているという。
私は船長から許可をもらい、
その中でも一番大きな物を持ってくるよう船員に指示を出した。
数刻後、上陸用ボートで運ばれてきた木片を見て、私は確信した。
船の残骸だ。
あの嵐に私達と同様巻き込まれたのであろう。
そして状況からして、
残念ながら船体そのものは海の底に沈んだと思われる。
その木片には、船の名を刻んだ痕跡が見て取れた。
ポルトガル船籍の大型のキャラック船の名前だ。


それは、私の長い船乗り生活の中で得た噂のなかでも、
忌まわしい部類に入る黒い噂を、
確信へと変えさるものだった。


所有しているのは、リスボンでも有数の大きさを誇る商会だ。
おもに開発が進む西インド諸島での砂糖交易が中心だと聞く。
なぜ、カリブの交易船が地中海に?
船長が当然の疑問を投げかけてきた。
そんなときに、再び見張りの声が響き渡った。


人が、いる!!


その報告を聞いた途端、私は船長が持っていた望遠鏡を奪い取り、
すぐさま船首に駆け出した。
そして望遠鏡を目に当て、あたりを見回す。
ボートが海上に浮かんでいる!
そして、確かにそのボートに人らしき影が横たわっているのが見て取れた。


そう、それが、二度目の奇跡……。


再び先ほど木片を拾ってきた船員達が救出に向かった。
船長は、なぜわざわざ敵国の船の人間を、とつぶやくのが聞こえた。
その面を思い切り殴りたい衝動は、
後ろにいたハンナの無言の制止で、なんとか抑えることができた。
やがて、2艘のボートが船に接舷し、
船員達がシーツにくるまれた人を抱えて甲板まで戻ってきた。
いや、大人の人間では、なかった。
その顔を覗きこんで私達は言葉を失った。




黒い肌の、小さな小さな女の子だったのだ。




齢にして2歳くらいだろうか?
おそらく泣き叫んでいたのであろう、顔には涙のあとが目立っていた。
しかし、その目は開いていない。
いや、かすかだが息の音がする。
胸もかすかに上下している。
生きているのだ。
誰もがそれを確認し、安堵の溜息をついた。


私は夜に、ハンナにだけ昼間に確信した事を話そうと思った。
そばには、黒い肌の幼子がまだ意識を取り戻さないまま横たわっている。
まず、嵐で沈んだと思われるカリブ交易船の正体。
それはおそらく、奴隷の運搬船。
例のリスボンの大手商会は、
北アフリカから多数の奴隷を買い付けて船に乗せ、
それをカリブ諸島まで運び、開発隊に「売却」する。
奴隷達はサトウキビ生産や砂糖生産の労働力として使われた。
奴隷船はその砂糖を積んで本国に帰り、さらに新たな奴隷を…と、
こういったからくりだったと思われる。
それが今回、あの嵐にあい遭難した。
そこまで話して、あの子の顔を見た。
まだ、目を覚まさない。
奴隷として買われた両親と一緒にあの奴隷船に乗せられたのであろう。
しかし、海のきまぐれで親子は永遠に引き裂かれてしまった。
そう、永遠に……。
奴隷なんて、ない世の中になればいいのに。
ハンナが、やっと言葉を口にした。
残念ながら、これはポルトガルに限ったことではない。
祖国イスパニアでも、影でこういった労働力を売買している噂は、
海にいたころ耳が腐るほど聞いているのだ。
それが、今の繁栄を支えているのも事実。
それが、現実なのだ。


……


かすかな、音。
それは、異国の言葉。
あの幼子が、眠りながら口にした言葉。
私とハンナは、思わず振り返った。
もちろんその言葉の意味は、わからない。
しかし、こう聞こえた気がしたのだ。




おかあさん、と……。




この子の名前を、考えてあげないといけませんね。
ハンナが言った。
その前に、あの船長にどう言い訳するかを考えるのが先だ。







※編者注:その後筆者夫妻は、ジェノヴァで別の商船に乗り換え無事にヴェネツィアに到着。
隠居生活に入る。
この日記では、ヴェネツィアでの生活や夫人への愛、
そして養女として引き取った例の黒肌の少女の成長が、
いきいきとした描写を交えて書かれている。
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テーマ : 大航海時代Online
ジャンル : オンラインゲーム

コメント

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No title

何かと思ったら誕生秘話だ!!!
絶対、生い立ちストーリーだからコレ!!!!
続編あるのかよ><
待ってる><b

No title

>天切り松さん
はい、お約束してたものですw
実はさきほど続編ができあがったばかりです!
おかげで今日はインできなかったじぇい;;


いわゆるブログでフィクション物をやるのは、
個人的には勇気がいるものでして。
できたら感想などいただけたら、と思います。
「もうやるな!」とかw
プロフィール

ククルクル

Author:ククルクル
B鯖ヴェネツィア籍
通称「ぽっぽ」
メイン冒険者ですが、やってることは芸人です。



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